ジャンプは30巻ルールでも作るべきじゃないか?

 今回は週刊少年ジャンプに中堅作品を円満終了させる選択肢はないのだろうか?:360度の方針転換と言う記事を取り上げてみます。

 昨日の記事でも述べましたが、コンテンツビジネスを継続して成功させるコツは、固定ファンを大量に抱えられるようにする事と、新しいファンを定期的に開拓する事です。幾ら一時的に固定ファンを大量につかむ事ができても、新規ファンを開拓できないコンテンツはいずれ衰退の道を歩む事になります。この事を踏まえて、ジャンプという雑誌の現状を考えてみたいと思います。

  • 単行本は売れても雑誌は売れないのは何故か?

 周知の通り、ジャンプは人気投票を中心にした紙面構成を行っており、人気が得られなかった漫画はあっという間に打ち切りを食らう事になります。これは新連載だけではなく、今まで高い人気を誇った作品ですら、陰りが見えたら打ち切りを受ける事があります。この過酷ともいえるシステムがジャンプという漫画をトップの雑誌に育ててきた事は間違いないでしょう。しかし、近年のジャンプの部数は年々減り続けているそうです。しかし、雑誌の部数は減る一方で、単行本の部数は高い状態です。この理由は何なのでしょうか。

  • ジャンプの人気漫画の中身を考える

 雑誌の部数減少の理由として「1話辺りの話の薄さ」が関連するのではないかと考えます。今のジャンプを読んでみてください。「ワンピース」「ナルト」「ブリーチ」などのバトル漫画、1週間でどれほど話が進むでしょうか?「ワンピース」は過去回想が始まると数週間かかり、戻ってきた時には読者は現在の話の流れを忘れかけています。「ナルト」「ブリーチ」は原稿に空白部分が多く、コマも大き目です。これは「テニスの王子様」など他のジャンプ漫画も陥りがちな事です。連載開始当初は打ち切りを避けるために1話ごとに起承転結をつけたり、数話で終わる小さな物語を掲載している状況だったのが、アニメ化などを経て人気が安定すると、コマが大きくなり、話の進むスピードも急激に遅くなるのです。これが部数減少の理由なのではないでしょうか。中身の薄い雑誌を毎週買うより、好きな作品の単行本を買って一気に数週間分の話を読んだ方が面白さが味わえる状態が続いていれば、雑誌を買わなくなる人が増えるのは当然なのではないでしょうか。

  • 作品の長期化は雑誌の力を弱めるのでは

 誰しも、好きで好きでたまらない作品に対して、「ずっと続いて欲しい」「もっと読みたい」と思う事はあると思います。編集部も、人気のある作品を手放そうとはしませんから、今まで多くの人気漫画が漫画家の思いとは裏腹に引き伸ばしにあってきました。その結果、多くの漫画家が漫画を描く事への情熱を失ったり、アイデアが枯渇したりして潰されてきました。また、無理な引き伸ばしで描かれた漫画が人気を得られず途中で打ち切りをくらい、ファンは大好きな漫画が綺麗なエンディングを迎えられず中途半端な終わりをするという悲しみを味わってきました。
 この引き伸ばしは、漫画家やファンにとって悲劇だと思われがちですが、実は雑誌にとっても好ましくないのではないでしょうか。前述の通り、コンテンツは新規ファン開拓を怠る事が衰退に繋がります。「こち亀」のように短いショートストーリの連続ならば、途中からでもファンを開拓する事は容易かもしれません。しかし数年連載されていて、何十巻もの単行本が発売されている壮大なストーリー漫画の場合、読者としては後からファンとして加わるのはなかなか難しい事なのでは無いでしょうか。単行本の巻数が増えれば増えるほど、ファンが後から増えるのは困難な事だと考えます。
 連載の長期化は別の問題も引き起こすと考えられます。毎週連載を続けても、30巻の単行本が出るまでに約5〜6年ほどかかります。ジャンプの、主な読者層は小学校高学年から高校まででしょうか。この位の年頃となると、5〜6年の間に必ず受験の年が挟まります。大学生になると、生活スタイルが変化して漫画、雑誌から縁遠くなる人も多くなるでしょう。連載開始当初の高校生ファンは、5周年を迎える頃にはサラリーマンかもしれません。連載の長期化は、新規のファン開拓を困難にするだけではなく、固定ファンの離脱を起こしていくのです。
 引き伸ばしに苦しんだタイプの「北斗の拳」は全27巻、「ドラゴンボール」は全42巻、作者が引き伸ばしを恐れて終了させたタイプの「幽遊白書」は全19巻、「スラムダンク」は全31巻です。今の掲載作品は、中身が薄い事で巻数が多くなり、これらの往年の名作の巻数を超える作品が存在しています。これら長期連載の作品が看板作品とされている雑誌の部数が伸びないのは、ある意味当然なのではないでしょうか。新連載の作品も、何十巻も連載してきた作品を追い落とすのは非常に困難なため、多少評価を受けていても打ち切りを受けてしまいます。このままでは雑誌の閉塞感は高まる一方でしょう。

  • 30巻ルールでも作るべき

 出版不況の状況下で、編集部が苦労している事は想像に難くありません。せっかくヒットした作品を、まだ話が続けられそうなのに、みすみす終わらせてしまうのはもったいないと思うのも無理は無いでしょう。しかし、そういった状態を続けていれば雑誌そのもののコンテンツとしての力が失われていくばかりでしょう。
 そこで、「どれだけ人気が出ようが30巻前後を目処にして話を終わらせろ」というルールでも制定するべきです。1話分の話を上手く凝縮すれば30巻もあれば、十分壮大な作品を作る事は可能な事は、過去のヒット作が証明しています。「デスノート」のように、10巻程度でも毎週多くの人を惹きつける事ができれば、大ヒットも可能です。そろそろ、ジャンプも世代交代の時期を迎えるべきなのではないでしょうか。次に来る漫画家がなかなか台頭しないというのなら、強引に一度上に居座っているのを排除するべきです。とりあえず、まだまだ書きたいことがありそうな尾田栄一郎や、やる気があるのか無いのか分からない久保帯人岸本斉史のケツを一度蹴り飛ばす必要があると思います。