過激な叩きが起こるようになった理由を考える

 今回はいじめの国だという記事をとりあげてみます。
「この数年で一気にヒステリックになった」という事の原因は何なんでしょうかね。
考えられる理由は以下3点。


1)メディアの発達
 事件の被害者、被害者の遺族、加害者の親族への嫌がらせは以前からあったはずです。
「この数年」以前も十分ヒステリックだったけど、ネットや携帯の発達、普及によって
個人が全国に意見を発信出来る様になったから、今まではテレビの前でけしからんと
憤慨するだけだった人たちが、ネットで発言するようになったのではないでしょうか。
だから、叩きの絶対数が増え、目に付くようになったのだと考える事ができます。


2)モラルハザードへの強い憎悪
 多くの国民は強烈な遵法意識や正義感は無くとも、ある程度の善悪の分別を持って
日常生活を営んでいるはずです。ですから、近年の暴露されるモラルハザードに対して、
「日本社会を構築してきた柱が一本一本折れていき、社会が崩れ落ちそうになっている」
という感覚を抱いているのではないでしょうか。不正を働いた企業や個人が利益を得て、
正直者がバカを見る社会になりつつある事に、強い憎悪と警戒心を抱いているのでは?
格闘技の不正に関するバッシングも、甲子園で早実駒苫の熱戦が大きく称えられたのも、
「正々堂々と戦え!」「お互いが死力を尽くして戦えば、敗者の姿も美しい。」という
武士道的意識の発露と言えるのではないでしょうか。強烈な叩きは、逆に言えば日本人の
モラルが死にきっていない事の表れと言えるのかも知れません。


3)マスコミ自体の問題
 マスコミというのは昔から過激なスクープを追い掛け回しているもので、それ自体は
日本も海外のマスコミもさほど変わらないようですから、それについては言及しません。
メディアの中で、テレビは文字媒体の様にじっくりと考えながら読ませるという行為を
視聴者にさせる事が難しい部類に属します。高名な学者などが、政治や事件などについて
理路整然とした素晴らしい解説を行おうとも、視聴者がチャンネルを次々と変えていっては
意味がありません。年々テレビ視聴率は落ちているのに、長々とした解説や討論などを
朝のニュース、おそらく学生か主婦しか見ないであろうワイドショーや夕方のニュースに
持ち込んでも数字が取れなくなる恐れがあります。世の中、一言で片付けられる問題は
少なく、政治や社会の事件などは多くの知識を持ち、物事の背景などを調べ、緻密な分析を
しなければ語れるものでは無いはずです。「どれが正しい」「どれが間違っている」と
瞬間的に決め付けれる事の方が世の中少ないはずです。しかし、視聴者が求めているのは
「これは長い目で見ないと分からない問題ですよ。」などといった答えではなく、ズバッと
「これは悪だ!」と決め付け、テレビの前の自分の不満を代弁し、溜飲を下げさせてくれる
発言なのではないでしょうか。みのもんたをはじめとした、最近の報道番組出演者の
顔ぶれはまさにそういう発言をしてくれる人たちでひしめいています。


 ヒステリックになった理由はある程度分析できても、それを押さえる方法は分かりません。
結局のところは、脊髄反射的に叩こうとしてしまう自分を戒めて、怒りを感じたら深呼吸を
してから物事を考えていくしかないですね。

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